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水無瀬の町家 / ソファクッションを製作しました。

2024.03.21 Thursday

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    こんにちは。aemono projectの神 梓です。

    今日は、東京・八王子にある「水無瀬の町家」のために作ったソファクッションについてお話します。

     

    1970年に完成した「水無瀬の町家」設計は坂本一成さんです。

    学生の頃、本に穴が開くほど見ていた憧れの建築です。

     

    建築に途方も無い難しさを感じていた学生の頃、私は家具が建築と人を理解する「手がかり」になるのでは?と思っていました。

    表現する事へのためらいも大きかったので設計ではなく「家具の製作管理」を仕事とする事にしました。

     

    働き始めた特注家具製作会社 イノウエインダストリィズでの3年目。

    ボスから「神さん、水無瀬の町家に食器棚を作るのですが担当をお願います。」と言われた時の嬉しさと言ったら...!

    それが今から20年ほど前のこと。写真右奥の壁に取付いている棚がその時のものです。

     

    20年ぶりの「水無瀬の町家」は、やっぱり気持ちのいい場所でした。

    天井が高いのですが、背の低い家具を置くことによって、ちょうどよい人の居場所が出来ているのです。

     

    両サイドを少し囲まれた凹みスペースにソファ、その上に吊棚、手前に丸テーブル、壁からの照明。

     

    丸テーブルは家具デザイナーの大橋晃朗さんがデザインしたものです。

    何気なく置かれているように感じられますが、設計時、坂本さんと大橋さんはどんなお話をしながら

    家具を決めていったのでしょう...。

     

    (坂本さんが教えて下さいました↓)

     

    「水無瀬の町家」の設計は55年程前のことなので、この住宅の家具に関して、大橋晃朗さんとどんな話をしたか記憶にありません。この住宅では、主室のソファ、食卓テーブル、ティーテーブル、作り付け棚、そして寝室のベットの設計をしてもらいましたが、それぞれの家具の必要な場所について以外のことは、直接には話はしていなかったと思います。この設計の少し前、「散田の家」という私の最初の住宅の多くの家具の設計を大橋さんにして頂いていたこともあり、材種や形態等のイメージは共有していて、ほとんど「あ、うん」の呼吸の中で設計して頂いたように思います。

     

    大橋さんとは、私が篠原研究室に所属した1965年以来、知性的で才気ある先輩として交友関係を持っていただき、様々な対話を重ねました。多弁ではない寡黙な会話でしたが、幅広い知的な感性伴う魅惑的な意見がもらえる楽しい会話でした。この水無瀬の設計が始まった頃、大橋さんは篠原研究室から離れ、東京造形大学に赴任され独立されましが、交友関係はそれ以降も変わらず、幅広い領域に関する会話が続いておりました。その後も私の設計した住宅のほとんどの家具設計を担当してもらい、それらの家具は建物と調和して、それぞれの住宅に収まっていたと思いますが、その際にもそれぞれの個別の家具について、多くを語り合ったり、議論をした憶えはありません。

     

    .....長い年月をかけて蓄積された幅広い領域の会話がベースにあったので、個別の家具について

    議論しなくても「あ、うん」の呼吸で設計が進み、建築に調和した家具として収まっていったのですね。

     

    今回は、建築の修繕(床の張り替えや内部の塗装など)に伴い、ソファクッションを新しくすることになりました。

     

    製作は、石川県七尾市にあるエフラボさんにお願いしました。七尾市は、むかし建具職人の街として栄えたところ。

    その技術を今の需要に活かして繁栄している大規模な工場です。今年のお正月に発生した能登半島地震により大変な時期にお願いしてしまいましたが、今回も誠実な仕事をして下さいました。

     

    エフラボさんが製作プロセスを撮影してくださいましたので共有します。

     

    まずは「ウレタン」の作業場にて。

     

    水無瀬の町家にピッタリあうサイズのクッションにするために、芯となる硬いチップウレタンをサイズにカット。接着剤を吹き付けます。

     

    その表面に希望の座り心地にあった柔らかさのきめ細かなウレタンを貼ります。

     

     

    その上に接着剤を吹き付けて

     

    化繊綿を貼ります。

     

    次に「型出し」という工程。

    いきなり本番を作る訳ではないのです!!

    工場にある似たテクスチャーの生地を使って、本番同様の製作をしてみるのです。

     

     

    生地の張りや弛みなどを調整して...

     

    いざ本番の「裁断・縫製」へ。

     

     

     

     

    最後に「張込」

    (柔道をしているみたい!!)

     

     

    完成したものを七尾から八王子へ混載便にてお届けしました。

     

    お施主様より写真とコメントをいただきましたので共有します。

     

    安心感のある座り心地。丁寧な仕事。生地の色・織も空間にぴったりです。
    以前のソファの思い出を引き継ぎつつ 新たなデザインのクッションとともに…
    大切に使いたいと思います。ありがとうございました!

     

     

    aemono projectでは「つくり手から使い手へと受け渡される過程や関係性を知り、価値観やことばを共有しながら作っていけたら。」という思いの元、進行管理をしています。今回も、関わる人が納得できる「なんでもない日常の家具」をお届けできたように思います。これからも、その人にぴったりの上質な普段着を選ぶように、その場にちょうどよい家具を作っていきたいと思います。皆さま、ありがとうございました。

     

    建築・家具デザイン:アトリエ・アンド・アイ坂本一成研究室   坂本一成・久野 靖広

     

    ソファクッション製作:エフラボ 石山厚志  

    テキスタイル:Ribaco

     

    製作管理進行:SOLO 神 梓

    群馬の魅力を伝えるテーブル

    2021.06.01 Tuesday

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      「ミニチュアの汽車を走らせたい」と前橋工科大学で建築史を教える臼井敬太郎さんよりご連絡いただきました。

       

       

       

      それならば...と、藤森泰司アトリエがデザインをし、群馬県内にある工場の連携リレーで作っているテーブルOVERRIDEのカスタマイズが良いのでは?とご提案。

       

       

       

      天板素材は、産業廃棄物として株式会社ナカダイに集まるパーティクルボード。

       

       

       

       

      それを株式会社モノファクトリーが丁寧に分別し、使いやすいようにストック。

       

       

       

      加工は塗装が得意な木工所、ハルナ工芸。

       

       

       

       

      群馬県内で排出された産業廃棄物を丁寧に磨いて、石のような質感に仕上げたテーブル。

      新たな価値をともない、日常にもどす事が出来たように思います。

       

       

       

      群馬県内のあちこちで展示に使われています。

       

       

       

       

       

      text. 神 梓

      テーブルの修理/コルビジェのLC6

      2021.05.27 Thursday

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        25年愛用したテーブルの天板が痛んでいるので直したいとご相談。

         

         

        打ち合わせ中のお施主様と中山英之建築設計事務所の中山さん。

         

        コルビジェが1928年にデザインした名作テーブルLC6をどう直すか。

         

         

         

        天板だけを新しく作る?

        既存のものをそのまま使う?

         

        廃棄・製作・運搬にかかるコストを整理して、

        これからの使い勝手・意匠性を重視して、方針を固める。

         

         

         

        表面を研磨して古くなった塗装を剥がす。

         

         

         

        天板に塗料を塗る。

         

         

         

        メラミンにも塗料を塗る。

         

         

         

        貼り合わせて、密着するようにコロコロ。

         

         

         

        剥がれてこないように、ドンドン。

         

         

         

        メラミンの耳をそろえて。

         

         

         

        ていねいに面取り。

         

         

         

        手が触れた時に滑らかで、でも面を取りすぎずにシャープなままで。

         

         

        text. 神 梓